「神道政治連盟綱領解説書」から引用

はしがき

 神道政治連盟は、昭和44年11月8日に設立されてより「綱領5ケ条」を掲げて、本連盟の向かうところを示し、我が国の歴史や伝統文化を無視した政治姿勢を匡すと共に皇室の尊厳護持を中心に、国の基本にかかわるさまざまな運動に取組んでまいりました。

 さて、現下の我が国は、内外共に、政治的に、経済的に、また思想精神的にも多くの難問をかかえ、重大な時局に立ち至っております。

 特に、政治的には、近燐諸国との友好親善の名のもとに、外圧に簡単に屈する政治姿勢や民族の自衛と東亜の解放のため、やむを得ず戦った大東亜戦争を侵略戦争と称して恥じない弊風、経済的には、貿易摩擦やそれに伴う欧米からの市場開放要求、産業の空洞化、また、思想精神的には、政教問題に関する訴訟事件の続発や偏向教科書の横行、過激派等による反体制活動の激化等、何れを見ても我が国の将来を左右する重要な問題ばかりであります。

 このような時局に際し、本連盟は、綱領に基づき愈々活発な活動を展開して参りたいと存じております。

 ここに綱領5ケ条の解説を刊行し、ご活動の資に供する次第です。

  昭和62年7月1日

                          神道政治連盟

                           会長 服 部 貞 弘

 

      宣   言

わが日本国の現状は、内に外に誠に憂念禁じ難きものあり。よってこの際、神道の精神を以って志を同じゅうする者相はかり、民族の道統を基調とする国政の基礎を固め、且つその姿勢を匡さんがため、ここに神道政治連盟を創立し、次の綱領5ケ条の実現を期する。

      綱   領

1、 神道の精神を以って、日本国国政の基礎を確立せんことを期す。

1、 神意を奉じて、経済繁栄、社会公共福祉の発展をはかり、安国の建設を期す。

1、 日本国固有の文化伝統を護持し、海外文化との交流を盛にし、雄渾なる日本文化の創   

   造的発展につとめ、もって健全なる国民教育の確立を期す。

1、 世界列国との友好親善を深めると共に、時代の弊風を一洗し、自主独立の民族意識の 

   高揚を期す。

1、 建国の精神を以て、無秩序なる社会的混乱の克服を期す。

   

        神道政治連盟綱領解説

 祖国日本の現状は、内に外にまことに憂念禁がたいものがあり、私共は「神道政治連盟」を組織して、天下同憂の士と相協力して救国の大道を進みたいと存じます。

 ここに、本連盟の綱領について、それがいかなる意味を有するかにつき、綱領草案審議の過程において、またこれを決議した設立発起人総会において、表明されました諸同士の意見を顧みながら、要約して解説いたします。

一 神道の精神を以って、日本国国政の基礎を確立せんことを期す。

 およそ現代の国家は、どこの国でも公式に定められた法令を明らかに示して、その法令もとづいて政治をする法治国であります。ところがその政治の基準となる国法が、よく守られ円満な政治が行われるためには、その法が、国民一般の社会意識の上に、確りとした根を有するものでなくてはなりません。法が国民一般の感情・良識・道徳意識から見て正しいものであり当然のものであると信ぜられるのでなければ、いかに強大な権力の背景のある法であっても、必ずしも守られるものでもなく、円滑に運用されるものでもありません。政治は、法を基準として行われるけれども、さらにその法の根底には、確固たる精神的基礎がなくてはなりません。

 しかるに戦後の日本の政治は、憲法をはじめとして多くの法令が作られましたが、その法令の精神的基礎が、はなはだしく薄弱、あいまいで、空白を感じさせるものがあります。

ここに現代政治のもろさの深い理由があると信じられます。一般の国民感情や良識から見て、当然に公認されてしかるべきことが禁ぜられていたり、、断じて許しがたいと思われることが放任されていたりして、国民精神の基礎と、政治的法則の間に、大きな開きを生じていると思われるのであります。私共は、この国政の基礎を固めるために、日本民族の祖先いらいの神道精神を、大いに発揚せねばならないと信ずるのであります。

 著しい一例をあげますと、皇室や神宮の大切な御儀式が、片々たる法令の妨げによって、由緒正しい伝統のままに行われがたいとか、あるいは国民の皇室に対する崇敬心をふみにじり、その尊厳を傷つけるような言論に対しても、国が野放しのような態度をとっているとか、そのほか国政と国民一般の感情・良識との間に、大きな開きを生じています。ご存知のとおり、国民の間には、神武天皇のご即位を記念して、2月11日の建国記念の日を法制的に定めたいという大きな要望があって、これは実現されました。、しかし、この程度のことでも大きな努力と時間を要しました。私共の精神的立場から見て、現在の憲法、皇室規範、刑法、民法、その他の諸法令の中には、国民精神の基礎から浮き上がっているものが、すこぶる多いと言わざるを得ない。これでは国政の安定は、期待しがたいのが当然でしょう。私共は、それらの法令を国民精神に一致するように是正して行くのみでなく、国民精神の中に、積極的に神道精神を復興せしめ、国政の理想とすべき目標を、確立せねばならないと信ずるのであります。

 本条に基づき推進する政策

 ◎皇室の尊厳護持

 ◎靖国神社公式参拝・国家護持

 ◎政教関係訴訟への対策

 ◎自主憲法制定運動

 

一 神意を奉じて、経済繁栄、社会公共福祉の発展をはかり、安国(やすくに)の建設  

  を期す。

 日本人が、悠久なる古代から現代にいたるまで、常に神社の祭りにおいて。祈ってきた要点は、ここにあると云ってもよいかと存じます。神々の前に五穀の豊かなること(経済の繁栄)を祈り、勤労を尚び、その収穫にさいしては、その神恩を奉謝する。しかして家族、郷党隣人、同胞相親しみ相援けて、公共の福祉を増進する。かくして、この国を安国と平らけく安らけく知ろしめす天皇(すめらみこと)の大御代の光栄と永久とを祈る。これが日本人の繰り返してきた祭りの心であり、ここに神道的日本国民の良識的な社会観があり、国家観があると思います。

 ただここで一言申したいのは、経済繁栄、公共福祉ということは保守でも革新でも、いずれの政治思想であっても、共通して標榜するところではありますが、本連盟綱領では、とくに「神意を奉じて」という一点に、力をおくことに注目していただきたいのであります。

けだし神意を奉ずることなく、神意に無関心な経済繁栄や福祉厚生政策は、人間の社会生活を決して幸いにするものではありません。経済の繁栄が却って欲求不満の刺激となったり、非道の罪への誘惑となることも少なくありません。公共福祉の社会政策の進歩が、逆に家族隣人間の人間らしい情愛と責任感を失わせ、人間生活を形骸化し、人生を索漠たる管理機構の中に埋没させるような、大きな欠陥を生じていることは、現世紀の重大な問題となっています。本連盟が、経済繁栄、公共福祉政策については「神意を奉ずる」との精神的大前提の必須不可欠なることを、とくに強調する所以であります。

 安国という神前の祝詞の言葉は、現代では平和国家と言われています。けれども平和国家の語は、この20数年来あまりにも乱用されて形骸化し、あるいは一部の政治的謀略に逆用されたりして来た憾みがあります。そのために同一の語で、全く異なる思想が表現されるような混乱すらも生じています。本綱領では、この乱用された「平和国家」の語を敢えてとらず、日本人が千数百年来、神前において常に用いて来た「安国」の古語を明記し、もって真に伝統あり由緒ある「平和精神」を、誤つことなく発揚したいと考えたのであります。

 

本条に基づき推進する政策

◎ 農業問題の対策

◎ 税制問題の対策

 一 日本国固有の文化伝統を護持し、海外文化との交流を盛にし、雄渾なる日本文化の              

   創造的発展につとめ、もって健全なる国民教育の確立を期す。

 

現代の国民教育が、かつての占領軍権力の干渉のために、日本国固有の文化伝統との断絶を強制され、そのために同一の日本国民の間に、精神的分裂と混乱を生ずるにいたったことは、今日識者のひとしく憂いとするところであります。この不自然は、すみやかに是正されなければなりません。日本国民として、日本国固有の文化伝統の貴重なる所以を明らかにし、その護持につとめるのは当然でありましょう。とくにわれわれ神道人としては、そこに民族の祖先に対する厳粛なる責任を痛感するものであります。

 しかし固有の文化伝統の護持というのは、決して頑迷固陋の排外独善主義を意味するのではありません。日本の文化史そのものが、古代から近代にいたるまで、海外文化との交流には、常に熱心であり、その交流によって雄渾な創造的発展の道を進んで来たという点に、大きな特徴を有するものであります。この特徴は、将来いよいよ健全に伸ばして行かねばならないと信じます。

 けだし連盟の政治活動において、文化教育政策は、とくに重要な部分を占めるものであり、本綱領は、連盟の文化教育問題に関する基本的な姿勢をしめすものであります。

本条に基づき推進する政策

 ◎教育正常化運動

◎伝統文化の継承護持運動

 

一 世界列国との友好親善を深めると共に、時代の弊風を一洗し、自主独立の民族意識                             の昂揚を期す。

 日本民族の理想が、安国の建設にあることは、悠久の歴史を有するものですが、とくに「万世のために太平を開く」との終戦大詔渙発いらい、世界列国の友好親善こそは、日本国民の祈りとしても、その切実さを加えたと云うべきでしょう。万世のために太平を開く理想こそは、日本外交のもっとも重要な目標でなければならないと信じます。

 けれどもこの平和への切実な希望が、今日の国民意識の中で、屈辱敗戦の意識と、奇妙にからみあっているかに感ぜられることは、現代日本の一つの大きな思想的弱みとなっています。堂々たる平和への理想と、外交への隷属的追従の卑屈なる意識とを混線させてはなりません。真の平和とは、傲慢なる強者と、卑屈なる弱者との関係を意味するものでは決してありません。日本人には占領いらい卑屈なるコンプレックスが、はびこっています。これを一洗して、日本民族が世界列国の中にあって、その精神的能力においても、物質的能力においても、自信と誇りをもって立つことのできる民族であるとの自覚を恢復することは、今日の緊急なる問題であります。しかして、この毅然たる自主独立の民族意識を前提にするのでなければ、真実なる意味においての健全なる国際友好も親善も、期するを得ないと信ずるのであります。

本条に基づき推進する政策

 ◎建国記念の日奉祝運動

 ◎国旗掲揚・国歌斉唱推進運動

◎北方領土返還運動

 ◎国防意識昂揚運動

 一 建国の精神を以て、無秩序なる社会的混乱の克服を期す。

 現在の日本は、自由を謳歌しながら、ややもすれば、無秩序な社会的混乱を露呈し、法治国であることを疑わせるような乱世的様相を呈することの少なくないのは、国民多数の深く憂えるところとなっています。法秩序が無視され、ふみにじられたのでは、国家は一日として健在ではありえない。われわれは、断固たる決意をもって、祖国の法と秩序を守り祖国の安住のために努力せねばなりません。法治国家日本の秩序をふみにじる者に対しては、われわれは祖国を守るために、毅然として戦い、無法を許さぬとの決意を固くしなければなりません。国民にその決意なくしては、国は立たず、亡国のほかにないでありましょう。

 しかして、今日の社会的混乱は、思想の混乱と分裂にもとづくところが大きいのは周知のところであります。したがって、この社会的未秩序と混乱を克服するには、法秩序の厳守は、もとより緊急でありますが、その根本的最終の解決は、国民思想そのものの安定と確立を要すること、云うまでもありません。綱領が「建国の精神」を強調する所以であります。

 この建国の精神とは、綱領第一にかかげた神道精神に相通ずるものと信じます。神道の精神といっても、本連盟で云うところのものは、一宗派一セクトとしての精神を意味しているのではありません。

 日本の国では、よく知られているように、信仰的寛容の美風があり、伊勢、橿原、明治神宮とか、靖国神社などの社頭には、あらゆる宗門宗派の人々が参詣されます。このような国民的な精神を総称して、私共は、本綱領で神道精神という語で表現したのであります。私共の神道精神は、いやしくも日本国の忠良なる国民であるかぎり、いかなる宗派宗門の人々とも、相和し相携えて協力して行くことのできる巾のひろい民族伝統の精神を意味しております。

 このような意味での神道精神が、国政の基礎確立のために力強い作用を及ぼし、建国の精神ー万世一系のすめらみことを中心にして、道義正しい国を発展させて行くという精神が、高揚されねばなりません。そのときにこそ、無秩序と混乱とは、根本的に克服され得ると信ずるのであります。清く明るい日本国の姿を仰ぎ見ることができます。

本条に基づき推進する政策

 ◎建国記念の日奉祝運動

 

 神道政治連盟の綱領五ヶ条は、われわれが常日ごろ、神社の神前でお祈り申し上げる祝詞の精神を、通俗的政治的に表現したものと云ってもいいかと存じます。それは百年前に、「神武の創業に還る」との精神をもって、新しい世紀の革新を断行した明治維新の先人たちが志としたところを、一世紀以後の現代の条件下において、継承したいとの念願をもって、打ち立てられた綱領であります。文辞の表現が、簡単でありまして、一読必ずしも意を通じがたい点もあるかと存じまして、解説いたしました。祖国の現状を直視して、憂いを同じうし、志を同じうせられる方々に訴え、御参加ご協力を要望いたします。